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勝手気ままな映画レビュー

映画「運び屋」(2019/03/08公開)レビュー

約10年振りに、”クリント・イーストウッド”が、俳優としてスクリーンに戻ってきてくれた映画「運び屋」、観てまいりました。

 

https://www.instagram.com/izaku_khatis/p/BvDh1ZAnDZa/

映画「運び屋」を観に来ましたが、スーパーヒーローものしかポスターもサイネージもなくて、しかたがないので、パンフの写真を上げておきます。 「運び屋」、とてもおもしろかったです。こんなジジイの人生を歩みたくはないけれど、こんなジジイになってみたいような憧れも芽生えます。

 

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・10年振りのカムバック

 

 一時は俳優を引退すると宣言したと報じられていましたが、「グラントリノ」以来の制作・監督・主演で、こんな素敵な映画を引っ提げて、スクリーンにカムバックしてくれました。

  御年88歳、歳を考えると引退宣言するのもしかたないのかなという気にもなりますが、そんな風に気遣ってしまったことが失礼だったと思えるくらい、しっかりとした演技を見せてくれています。

 

 この高齢で、この絶妙な演技に加え、これだけ質の高い映画を撮ることができるというのは、常人離れした頭脳と肉体を持っているに違いありません。

  なんてったって、88歳でも、足腰がまだしっかりしている役者が足元がおぼつかない90歳のジジイのふりをするんですよ。

 しかし、高齢でもコールガール2人を相手にするシチュエーションは、演者本人を彷彿とさせるエピソードではあります。

 

・伝説の運び屋

 

 このお話しは、伝説ともなっている、マフィアに雇われたコカイン密輸の運び屋が、実は87歳のジジイだったという実話から着想を得た物語です。

 評伝によると、一度に末端価格13億円相当のドラッグを運んだというんですから、高齢だったからこそなのか、相当な図太い神経をもった御仁であったことでしょう。

 

 クリントイースト・ウッドは、この主人公の実在のモデルとなった”レオ・シャープ”を知っている人に取材をしたかったらしいのですが、結局、誰も見つからなかったらしいです。

 

 そして、クリント・イーストウッドニック・シェンクは、90歳を超えたジジイが、何故、伝説の運び屋となったのかという背景を掘り下げて、家族を持ちながらも、家族を顧みず仕事にまい進し、その挙句に事業に失敗して、家族から見放されてしまった男が、家族を求めるあまりに、家族のために稼いで、家族と和解することができるなら、悪いこととは理解しつつも、ドラッグの運び屋という悪行に手を染め、その法外な報酬額の誘惑に抗うことはできなかったというキャラクター”アール・ストーン”を作り上げました。


・やっと、家族が大切だと気付いたジジイ

 

 この映画は、主人公”アール・ストーン”の経験だけを描いた物語なので、この”アール・ストーン”という人物像だけで成り立っている映画です。

 それが、これほど心を打つ物語になっているということは、その人物構成がいかにうまいかということに他ならないしょう。

 

 上述の通り、運び屋になってしまった事情に、大切な家族を、周りの人間を幸せにするためと言い訳し、悪事を正当化しようとする弱い男気質を見せながらも、表面的には、退役軍人という経歴もあって、チンピラの銃口なんかにビビることもなく、ドラッグを積んだまま、パトカーに止められても、ひょうひょうとごまかし、ピンチを切り抜ける度胸のある男、それが90歳のジジイであるというおもしろさ。

 

 そして、この映画のラストは、ある意味、主人公の甘えた願望が叶って終わりという風にとれなくもないのですが、家族というコミュニティの大切さを教えてくれます。


・こんなジジイになってみたい?

 

 だからといって、この映画は家族愛を成就させるために善悪を天秤にかける話ではなく、このジジイの行動に、普通の男とだいそれた男という2面性がが共存する姿が、リアリティを持って表現されていて、自分のことのように感情移入できるというところがこの映画のおもしろさです。

 

 こんなジジイのような人生を送りたいとは思いませんが、こんなジジイになってみたいような憧れみたいな感情は持ちました。


・補足

 

 娘役の”アリソン・イーストウッド”は名前からもわかる通り、クリント・イーストウッドの実の娘です。
 親子喧嘩のシーンがとても自然な演技に見えたのは、わたしだけではないでしょう。

 

 この映画の原題は「THE MULE」となっていますが、なんのことやらと思ったら、直訳すると動物の”ラバ”のことだそうで、ドラッグの運び屋を意味する隠語になっているとのことです。

 

作品情報

 

タ イ ト ル:「運び屋」(原題:「THE MULE」)

制 作 国:アメリ

監   督:クリント・イーストウッド

脚   本:ニック・シェンク

原   案:サム・ドルニック「The Sinaloa Cartel's 90-Year-Old Drug Mule

製   作:クリント・イーストウッド

      ティム・ムーア

      クリスティーナ・リベラ

      ジェシカ・マイヤー

      ダン・フリードキン

      ブラッドリー・トーマス

製作総指揮:アーロン・L・ギルバート

撮   影:イブ・ベランジェ

美   術:ケビン・イシオカ

編   集:ジョエル・コックス

衣   装:デボラ・ホッパー

音   楽:アルトゥロ・サンドバル

出   演:アール・ストーン:クリント・イーストウッド

      コリン・ベイツ捜査官:ブラッドリー・クーパー

      主任特別捜査官:ローレンス・フィッシュバーン

      トレビノ捜査官:マイケル・ペーニャ

      メアリー:ダイアン・ウィースト

      ラトン:アンディ・ガルシア

      フリオ:イグナシオ・セリッチオ

      アイリス:アリソン・イーストウッド

      ジニー:タイッサ・ファーミガ

 


映画『運び屋』特別映像30秒【HD】2019年3月8日(金)公開


映画『運び屋』特別映像 クリント・イーストウッドインタビュー

 


アリソン・イーストウッドが父との共演を語る『運び屋』特別動画インタビュー

 


映画『運び屋』で夫婦を演じたクリント・イーストウッド&ダイアン・ウィーストのインタビュー映像

 


「運び屋」アンディ・ガルシア インタビュー映像

 


『運び屋』脚本家ニック・シェンク インタビュー映像