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勝手気ままな映画レビュー

映画と演劇の違い

映画と演劇の違いについて(蓬莱竜太さんの言葉を受けて)

 

「映像は残るが、演劇は残らない」

 

 先日、観覧しました演劇「母と惑星について、および自転する女たちの記録」のパンフレットで作者の蓬莱竜太さんが寄せている文中に、映画と演劇の違いについて書いてありました。

 

 蓬莱竜太さんは、「映像は残るが、演劇は残らない」というようなことをおっしゃっています。

 

 なるほど、確かにその通りで、演劇はそのときだけのもので、二度と同じものを観たり、聞いたりと体感できるものではありません。録画してあるものを観たとしても、それは舞台を観たことと同じ体験にはなりません。

 

舞台における”再演”とは、映画でいうところの”リメイク”?

 

 先日観劇させていただいた舞台は再演であり、再演ということは初演の形をとどめず、初演の経験値を糧にして、ブラッシュアップしたものを提供することができると蓬莱竜太さんは言っています。


 そして、この継承され、継承されたものから新たに生み出されていく再演という過程が、作家の立場として、蓬莱竜太さんにとっては、おもしろく、うれしいことだと言っています。

 

 このような舞台での”再演”とは、映画でいうところの、”リメイク”や”リブート”といったところなのでしょうかね。映画の場合は、スタッフ、キャストが一新されることが通例なので、ブラッシュアップというカタチにはなりにくく、まったく別の作品として、制作されることになります。

 

演劇は”一瞬”、映画は”永久”

 

 確かに、映画も演劇も、その時代に合わせた内容/演出で作品を構成する必要がありますが、映画は、時代遅れの作品となったとしても、後世のメデイアに安易に残りやすいものとして存在します。


 メディアへの露出の頻度の差ということになるのかもしれませんが、この差は結構大きな違いです。演劇は、その一瞬のライブでの輝きを求め、そのときしか味わえませんが、映画は未来に残り、繰り返しの感動を味わえるものになります。

 

 そういう意味では、観劇はスポーツ観戦と似ているかもしれません。そのとき、その場所で、その一瞬だからこその輝きを体感できることがすばらしい体験になります。

 

 映画鑑賞においても、初めて見る作品については、同じようなことが言えますが、舞台に比べるともっと安価で大衆的な娯楽なので、そのときに観ておかないと、二度と観れなくなるというような緊張感はありません。

 

 ま、でも、良い作品に出合えれば、演劇でも映画でも感動する気持ちに違いはありませんけど。

 

映画の中の世界の広がり


 自分が思うに映画の良いところは、スクリーンの外にもその映画の世界がちゃんと存在していると実感できることです。映画は、観る人間の想像力を利用して、その物語の世界がスクリーンで見えている以上の広さを感じさせることができるのです。


 舞台だと、その物語の世界の広がりを感じさせるのは、なかなか難しく、その効果には限界があると思います。実際に役者さんや装置が動いているのを観るわけですから、目の前の空間がリアルすぎて、舞台の外に広がっている世界を思い描くことは、結構難しいと思います。

 

 そういった体感の違いを考えると、舞台も悪くないですが、その世界に没入できる感覚は、映画の方が心地よいです。

 

 映画も演劇も物語を語るものとして機能しますが、表現手法はかなり違うところがあっても、人の心に訴えるものは同じものがあります。多くの人に共感を得られる物語であれば、映画でも演劇でも、それをうまく表現さえできれば、誰しも感動を呼び起こすことができることでしょう。