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勝手気ままな映画レビュー

映画「愛がなんだ」(2019/04/19公開)レビュー

「一筋縄ではいかない」恋愛映画「愛がなんだ」

 

 角田光代原作の恋愛小説の映像化に、恋愛映画での評価が高い今泉力哉監督が抜擢された映画「愛がなんだ」を観てきました。

 

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 「一筋縄ではいかない」という言葉がぴったりの恋愛模様を描いた、共感できるとかではなく、「こういう人もいるんだろうなぁ」って思いながら、感情移入していく感じの映画でした。

 

はまりまくっているキャスティング

 

 キャストはNHK朝ドラ「まんぷく」出演で、その名が全国区になった岸井ゆきのさんが主演で、かわいらしく、妄信的に恋する女性”テルコ”を嫌味なく演じています。童顔で少女のような風情が、一途な恋に妄信する姿にはまっていました。

 

 その相手役に、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの成田凌さんが、”男のクズ”をやらせたら日本一といった風情で、ダメ男の”マモちゃん”こと”マモル”を好演しています。二枚目役も似合う役者さんなので、”魅力ある”ダメ男ってのに、ピッタリでした。

 

 そして、その二人を取り巻く布陣に、これまた「まんぷく」で岸井ゆきのさんと共演している元乃木坂46のキレイどころ深川麻衣さんが、若干奔放な雰囲気を持つ主人公の親友”葉子”役に。演技の評価が高まってきている深川麻衣さんは、さらに磨きがかかってきているのではないでしょうか?

 

 バイプレイヤーとして、他の追随を許さないほどの異才を放っている江口のりこさんが、なかなかお目にかかれないような、自由奔放すぎる、とんでもなくガサツな主人公の恋敵”すみれ”役を、違和感なく演じています。

 

 深川麻衣さん演じる主人公の親友”すみれ”に恋し、”すみれ”に振り回される、若干気の弱めな感じのカメラマン志望の若者”ナカハラ”役に、今伸び盛りの俳優若葉竜也さん。好きな女性に振り回さられる姿が、とても板についていました。この映画の好演で名前が知られることになるではないかと思います。

 

 キャスティングは、どの役も間違いなくはまっています。

 

「”まもちゃん” or Die」

  

 以上の5人の織りなす恋愛模様が、物語として描かれているわけですが、物語の軸となるのは、岸井ゆきのさん演じる主人公”テルコ”が、妄信的に恋する”マモちゃん”こと”マモル”への接し方になります。

 

 ”マモちゃん”に恋してしまった”テルコ”は、この世の他の何物よりも”マモちゃん”が一番大事、どんなにつれなくされても、いいようにあしらわれ、ひどい仕打ちを受けても、我慢をして、自分を犠牲にしようが、"マモちゃん"のことを第一に考えた行動を繰り返します。

 

 その態度がコミカルな演技で一瞬微笑ましいと勘違いそうな感じなのですが、マモちゃんに尽くすためなら、会社をクビになっても、就職できなくても意に介さず、その恋に突き進むという、よく考えると狂信的でもある主人公の姿が、感情移入できるくらい嫌味なく、鮮やかに描かれています。

 

 この映画パンフレットに寄稿している映画ライター細谷美香さんが見事にこの主人公の姿を言い表しています、「まもちゃん or Die」と。

 

5人の織りなす恋愛模様

 

 そして、この二人の関係性を軸に、その二人を含めた5人のキャラクターの間で、その二人と似たような、そうでもないような恋愛模様が展開します。

 

 ”テルコ”が恋する”マモちゃん”には、他に好きな女性が現れます。それが、江口のりこさん演じるとんでもなくガサツな女”すみれ”なのですが、「何故、こんなガサツな女がいいのか?」、”テルコ”には理解できないまま、それでも、”マモちゃん”の恋の成就を後押ししようとします。


 そのガサツ女”すみれ”に振り回されながらも”すみれ”を気遣う”マモちゃん”、その構図は、「”テルコ”VS”マモちゃん”」=「”マモル”VS”すみれ”」と映し出され、主人公の目にもそう映ったはずです。

 

 同様に親友の”葉子”が自身に恋する”ナカハラ”を、”ナカハラ”の気持ちを踏みにじろうとも、いいように使って振り回す姿も、似たような構図として描かれます。

 

 この5人は皆、同じような間違いをして、本意としては、そうしたくはないのでしょうが、鈍感なだけなのか、何よりも自分の欲求が優先されるからなのか、人を傷つけても、自分が傷ついても、その行動を改めようとはしません。

 

結局、”恋”=”執着”なの?、”愛”って、何?

 

 この映画の描く、うまくいかない恋愛模様は、不器用というよりは、好きな人が幸せであれば、他はどうでもいいというような、究極の愛を最優先にして、うまく立ち回ろうとする意志がないように描かれています。

 

 こういった姿は、ある意味、自分勝手な態度にも見えるのですが、その行き着く先が、その人を好きであること、好きな人のためになることが何よりも大事という姿勢が、単純な一途な恋ではない、”執着”という言葉で定義されるのです。


 ”テルコ”は”マモちゃん”に、「少しでも近づきたい」、「同化したい」とさえ思うようになります。それが”恋”なのか、ストーカーよろしく、ただの”執着”なのかは、答えは出ませんが、自分の好きな人にとって、自分が大切な存在になることよりも、好きな人に尽くすことが優先される感情は”恋”ではないという結論でもあるようです。

 

 人が人を好きになる感情なんて、そんなものかもしれません、好きな人を好きでいる自分も大切であって、本当に好きな人のためだけを願っているわけでもないかもしれません。

 

 これは、この映画原作の追求するところでもあり、この映画「愛がなんだ」は、その複雑な恋愛模様を、エキセントリックになりながらも、見事にわかりやすく描いた映画です。

 

「愛がなんだ」作品情報

 

◆タイトル:「愛がなんだ」(2019/04/19公開;日本)

 

◆スタッフ;
・監督:今泉力哉
・脚本:今泉力哉、澤井香織
・撮影:岩永洋
・照明:加藤大
・録音:根本飛鳥
・編集:佐藤崇
・美術:禪洲幸久
(原作:角田光代

 

◆キャスト
・山田テルコ:岸井ゆきの
・マモル:成田凌
・坂本葉子:深川麻衣
・ナカハラ:若葉竜也
・塚越すみれ:江口のりこ
・葉子の母親:筒井真理子
・テルコの上司:片岡礼子
・テルコの同僚:穂志もえか
・マモルの友人:中島歩

 


切なすぎる…岸井ゆきの×成田凌『愛がなんだ』予告編

 


愛がなんだ 公式インタビュー|Just Only Love Official Interview

 


今泉力哉監督、岸井ゆきの 『愛がなんだ』記者会見|Just Only Love - Press Conference

 


『愛がなんだ』主演:岸井ゆきの 監督:今泉力哉 完成披露試写会/舞台挨拶 ノーカット

 


今泉力哉、岸井ゆきの、若葉竜也 『愛がなんだ』舞台挨拶|Just Only Love - Stage Greeting

 


岸井ゆきの、成田凌とのキスシーンに不満!? 映画『愛がなんだ』公開記念舞台あいさつ

 

  

  

愛がなんだ (角川文庫)

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