映画「グリーンブック」レビュー
映画「グリーンブック」、観てきました。
米国アカデミー賞作品賞受賞作品「グリーンブック」観てきました。評判通りのとても良い映画でした。“ピーター・ファレリー”の直筆らしいサインがあったけど、この映画館に来たのか?
・「グリーンブック」とは
この映画のタイトルでもある「グリーンブック」とは、まだまだ人種差別が色濃く、法律さえもが黒人に対する人権侵害を強いる時代のアメリカにおける、黒人の利用できる宿や店、夜の外出を禁止している地域など、黒人が避けた方がいい施設や場所を詳細に記した黒人旅行者向けのガイドブックのことだそうです。
こういった意味を持つタイトルからもわかるように、この映画はアメリカに長く暗い影を落とす人種差別に対する嫌悪やその愚かさがテーマではあるのですが、実は、そのテーマは背景に過ぎず、この映画で本当に味わってほしいテーマは、人種や格差などの違いはあっても、人の持つキャラクターや信念が正しく、信じられる者同士であれば、二つとない友情や情愛を育み、大きな喜びを得ることができるという、とても個人的な経験と感情に共感を持てるということです。
この映画のメインキャラクターの二人のように、自分の出自やキャリア、立場がどんなものであっても、自分の持つ信念や意志、嗜好にさえも、しっかりと自信をもって生きていれば、誰にも負けない、誰に対しても誇ることのできる人生を歩むことができるというメッセージがこの映画のテーマだと受け取りました。
・コメディーの名手:”ピーター・ファレリー”の真骨頂
コメディーの名手であるピーター・ファレリーの監督作品ということなのでしょうが、とにかく、脚本がいい!。ほろっと涙してしまいそうな場面でも、悔しさや怒りが残りそうな場面でも、軽く笑いに変えてしまうセリフがとてもうまい!
ゴタゴタをうまく解決する能力に長けた主人公:トニーの言動は、その愛すべきキャラクターを見事に表現しています。正義にも振り切らず、悪事にも振り切らず、落としどころを見事にとらえて、問題を解決する様は、現実的でありながらも、ちゃんと正義とは何かを教えてくれます。
ほんとに絶妙な、見事な脚本です。
・アカデミー賞助演男優賞受賞:”マハーシャラ・アリ”
この映画で、偉大な黒人ピアニスト:ドクター・ドナルド・シャーリーを演じたマハーシャラ・アリはアカデミー賞助演男優賞を受賞しました。
黒人でしかもゲイでありながら、超エリートで上流階級の中で育まれた自分の生い立ちを受け入れ、何をすれば、自分も満足する正しい行動なのかを追求する人生に目覚めた男の葛藤を、その立ち居振る舞いからして、見事に演じ切っています。
アメリカ製SFTVドラマ「4400」の、あの黒人パイロットが、こんな栄誉を受けるにふさわしい俳優になろうとは、ビックリですけどね。
・あのカッコよかった”アラゴルン”が...、ヴィゴ・モーテンセンよ!
しかしながら、私の個人的な好みというか、印象としては、マハーシャラ・アリよりも、残念ながらアカデミー賞は獲れませんでしたが、主役のヴィゴ・モーテンセンの方が良かった。
このキャラクターがとても魅力的だったからではあるのですが、あの超カッコよかった「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンが、こんな腹の出た大飯ぐらいの、イタリアンマフィアの覚えもめでたい用心棒とは、のっけから、どビックリの姿をさらしていましたからね。
ま、そんな”+20kg増量”という、”デニーロ・アプローチ”の努力をしたからというわけでもなく、彼自身は、デンマーク系アメリカ人にも関わらず、ちゃんとイタリアンチンピラ風情が様になっていたし、太ってはいても、やっぱり、結構カッコいいし。
ヴィゴ・モーテンセンの演技は、いつの間にか自分に根付いていた黒人差別を自然と肯定していた姿勢から、徐々に人種差別は悪だと認識していく感じがとてもよく表れていました。それは、スクリーンを通して、トニーがドクター・シャーリーに抱く友愛を観客が感じ取れるからに他ならないでしょう。
・ぜひ、映画館で!
泣けて~笑って、笑って~泣けて、最後は気持ちのいい笑顔で観終わることのできる素敵な映画です。アカデミー賞作品賞受賞も納得です。
ぜひ、ぜひ、映画館でご堪能いただきたく。
・補足
この映画のお話しは実話なのですが、パンフレットを読んでビックリ、この主役の人物:”トニー・リップ(本名:トニー・バレロンガ)”は、実際にハリウッド映画に深く関わっていた人物で、かの「ゴッドファーザー」で俳優デビューしており、他に「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」、「グッドフェローズ」、「フェイク」、「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」(TVシリーズ)などの数多くの映画作品に出演していた俳優さんでもあったんですって。
・作品情報
タ イ ト ル:「グリーンブック」(原題:「Green Book」)
制 作 国:アメリカ
監 督:ピーター・ファレリー
脚 本:ニック・バレロンガ
ブライアン・ヘインズ・クリー
ピーター・ファレリー
製 作:ジム・バーク
ニック・バレロンガ
ブライアン・ヘインズ・クリー
ピーター・ファレリー
クワミ・L・パーカー
チャールズ・B・ウェスラー
製作総指揮:ジェフ・スコール
ジョナサン・キング
クワミ・L・パーカー
ジョン・スロス
スティーヴン・ファーネス
音 楽:クリス・バワーズ
撮 影:ショーン・ポーター
編 集:ポール・J・ドン・ヴィトー
出 演 者:トニー・”リップ”・バレロンガ:ヴィゴ・モーテンセン
ドクター・ドナルド・シャーリー:マハーシャラ・アリ
ドロレス・バレロンガ:リンダ・カーデリーニ
オレグ:ディミトル・D・マリノフ
ジョージ:マイク・ハットン
アミット:イクバル・セバ
ジョニー・ヴェネス:セバスティアン・マニスカルコ
ボビー・ライデル:ファン・ルイス
プロデューサー:P・J・バーン
- アーティスト: サントラ,ジーン・オースティン,ナサニエル・シルクレット,ジェラルド・ヒューイ・ラムゼイ,ジョニー・メイ・マシューズ
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2019/02/27
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