舞台演劇「母と惑星について、および自転する女たちの記録」(再演)レビュー
「母と惑星について、および自転する女たちの記録」を観劇
この舞台の公演情報を目にしたとき、まず、思ったのが、キムラ緑子さんの演技が生で観てみみたいということ。
そして、映画「累」で、その演技力に感心した芳根京子さんが主演。そらに、田畑智子さん、鈴木杏さんと、とてもいい布陣。
4人という少人数なら、この舞台の成否は彼女たちひとりひとりの演技にかかっているということ。
ならばこそ、ぜひ「観てみたい!」と、とても興味を引かれました。
舞台は映画ほど、頻繁に行くわけにもいかないので、あまり多くは観てはいません。ですので、演劇について、感想を述べるというのも、初めてのことであります。
映画と勝手が違い、あまり詳しくないので、評価や感想を述べるのはためらわれますが、とても見応えのある舞台だったので、記録という意味合いからもレビューを残しておこうと思います。
4人の演技派女優による布陣
この劇「母と惑星について~」は、再演ということで、初演のキャストは
母、辻 峰子 :斉藤 由貴
長女、辻 美咲 :田畑 智子
次女、辻 優 :鈴木 杏
三女、辻 シオ :志田 未来
そして、今回のキャストは、
母、辻 峰子 :キムラ 緑子
長女、辻 美咲 :田畑 智子
次女、辻 優 :鈴木 杏
三女、辻 シオ :芳根 京子
どちらにしても、重鎮~ベテラン~若手と演技力には評価の高い女優陣を集めた布陣となっています。
初演では、作者である蓬莱竜太さんが、第20回鶴屋南北戯曲賞を、次女役の鈴木杏さんが第24回読売演劇大賞女優賞を、それぞれ受賞されています。
初演は観ておりませんので、比較等はできませんが、初演も今回同様に、キャスト陣は素晴らしい演技を見せてくれたことと推測します。
今回のキャスト陣、キムラ緑子さん、田畑智子さん、鈴木杏さん、芳根京子さん、皆さん、誰しも負けず、劣らずの迫力ある演技で魅了させられました。
圧巻のキムラ緑子さん!
中でも、スゴイなと思ったのが、”キムラ緑子”さんの演技でした。
発声方法、表情の作り方、身体の使い方、どれをとっても、観客からはこう見える、こう聞こえるとわかっているかのような演技でした。
バイプレイヤーとして、数多くの映画やTVドラマに出演し、元々舞台女優出身ですから、数えきれないほどの舞台に登壇されてきた実績を持つ女優さんだと認識しています。
詳しいわけではないのですが、勝手なことを言わせてもらうと、どんな作品でも、どんな役柄でも、そつなくこなしてしまう、そんな女優さんだと思っています。
しかしながら、今回の力の入った演技は、ホントに圧巻でした。今回、このとき、この演技を観ることができた自分は、ホントに幸せ者です。
舞台初主演、芳根京子さん!
そして、舞台初主演の”芳根京子”さん、TV画面やスクリーンを通して、器用に演技ができる若手の女優さんだなと感心しておりましたが、やはり、その実力は本物のようです。
映像作品では、ささやきでもマイクで拾ってくれますが、舞台ではそうもいきません。そんな中でも、声のトーンを落としても、しっかりと劇場全体に声が届くように、違和感のないセリフを発し、毎回同じタイミングで本物の涙を流すことができるなんて、スゴイですよね。
「若いのに」なんて陳腐な言葉は、才能ある若者には失礼な言葉かもしれませんが、いったいどうやったら、そんなことができるような人間になれるのだろうかと、不思議でなりません。
奔放な母親VS三姉妹
本作は、奔放で身勝手に見えていたシングルマザーの母親の突然の死に際して、残された3人の娘たちが、これまでの母親との関係性から、曲りなりの家族愛を認識し直して、これからの自分の人生を模索しながらでも、前を向いて生きていこうとする姿を描いたものです。
お互いに、面倒くさい存在だと思いつつも、母として、娘として、愛おしくてたまらない、そんな描写がうまく、ところどころに愉快さもちりばめながら、せつないエピソードで形作られていくストーリーは、とて感情移入しやすく、この娘たちの行く末が気になってしょうがなくなります。
よくある話かも?
このお話しは、よくよく考えてみると、よくある話のような気もしてきます。
しかし、ありそうな話だからこそ、各キャラクターの抱えた問題や悩みがわかりやすく観客に伝わってきます。他人事と捉えれば、”よくある話”で終わってしまうようなエピソードでも、人が抱える苦悩は、他人にはなかなかわかってもらえないもので、当人にとっては、結構つらいものだったりします。
本作は、そういった誰しも抱えていそうな家族の問題に対して、家族なんて、結構意地の悪い者同士かもしれないし、そんなに優しいわけでもないかもしれないけど、意地悪くしたいなんて思ってなくて、本当は優しくしたいと思ってたりするんだよと、言ってくれているような気がします。
作品情報
・パルコプロデュース2019「母と惑星について、および自転する女たちの記録」
作 :蓬莱竜太
演出:栗山民也
2019年3月5日(火)~26日(火):東京公演・紀伊國屋ホール
2019年4月2日(火)・3日(水):高知文化プラザかるぽーと大ホール
2019年4月6日(土):北九州芸術劇場中劇場
2019年4月13日(土)・14日(日):ロームシアター京都サウスホール
2019年4月20日(土)・21日(日):穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
2019年4月25日(木):長崎市民会館
本公演は、東京での公演が終了してしまいましたが、地方公演として西方面へ向かい、若干数の公演がまだあります。場所によっては、当日券もあるかもしれませんから、お近くの劇場での公演があるのでしたら、ぜひご観覧をオススメします。観る価値のある舞台演劇です。
※蛇足:長崎が舞台のお話しだから、千秋楽が長崎なのですね。
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