映画「女王陛下のお気に入り」(2019/02/15公開)レビュー
主演女優賞総なめの映画「女王陛下のお気に入り」
少し前になってしまいますが、アカデミー賞をはじめ、メジャーな映画賞の主演女優賞を総なめにしている映画「女王陛下のお気に入り」を観てきました。
「女王陛下のお気に入り」も、観てきました。メインの女優3人の演技バトルがすごかった。
・3大女優の演技バトル
女王アンを演じる主演の”オリヴィア・コールマン”、その女王の寵愛を奪い合う女官と侍女に”レイチェル・ワイズ”と”エマ・ストーン”、この3人の女優の演技のすさまじさたるや、他にないくらいの迫力でした。
確かに、女優賞を総なめにするのは当然と思えるくらい、”オリヴィア・コールマン”の演技はすごいものでした。しかし、”レイチェル・ワイズ”も”エマ・ストーン”も負けてはいません。
ほほの引きつらせ方、目くばせの絶妙さ、この3人の女優は瞳だけでも見事な演技をみせてくれることでしょう。この3大女優の演技バトルは、映画館のスクリーンでこそ、観る価値があります。
・荘厳美麗な衣装と官廷
そして、この女優陣を画面に映えさせるロケ地や衣装の絢爛豪華な美しさ、その世界観は中世期のイギリス王室は、きっとこんな感じだったに違いないと信じさせてくれるほどの素晴らしいものでした。
衣装は英国貴族のコスチュームならお手のものとする、3度ものアカデミー賞に輝くサンディ・パウエルが担当し、セットではなく、ロケ地となった王宮には実際にイギリス王室が使っていた土地に建つ「ハットフィールド・ハウス」という館が使用されています。
なので、本物ならではの、格式や荘厳さを表す美しさが余すところなく画面いっぱいに、迫ってきます。
・歴史をも揺るがす3人の女性の野心と欲望
お話しとしては、没落した元貴族階級の侍女:アビゲイルがイギリス王宮内で、先に君臨していた女官:サラを追い落とし、アン女王の寵愛を受けるべく策謀の限りを尽くすという、アン女王を取り合う女官と侍女の対決といった構図がストーリーの骨子になるわけですが、この三者三様に知略の限りを尽くして、自分の思い通りに事を進ませようとする姿があまりにも大胆で、周到なわりには子供じみていたりと、ときには滑稽にも見えるほどの強烈な印象を残します。
この3人の行く末が、結果として、大きな歴史の流れにも影響を及ぼすことになりかねないのですが、そんなことはお構いなく、個人的な野心と欲望を成就させるための容赦ない策略や手段が、観る者を圧倒し、楽しませてくれます。
・アン女王の特異性
この3人の中でも、アン女王のキャラクターは、他の二人の強くしたたかな女性というわかりやすいキャラクターとは一線を画し、生まれながらの女王、国を統べる者としての風格を維持し、フランスとの戦争などの国事を采配していると見せかける姿と、実は、病弱な自分に嫌悪感すら抱いていそうな超わがままでかんしゃく持ち、さても寂しがりや故のひねくれ者という性格のキャラクターとなっています。
この複雑な性質を持つキャラクターを、ここまでわかりやすく見せてしまうこの演技と演出はとてつもなく秀逸です。
・秀逸なるセリフ
以上のように、これだけキャラクターを色濃く、際立たせているのは、この3大キャラクターも含めた登場人物たちが発するセリフも秀逸だからです。
こんな陳腐で低俗な会話を、イギリス上流階級ではホントにしていたのかと思わせるようなセリフばかりなのに、なぜだかすんなりと入ってきてしまい、イギリス王室のこいつらだったらこんなものに違いないと思えてきます。
この映画は、演者を輝かせるための衣装や美術に加え、脚本が最もキャラクターを確立させる役割を担っています。アドリブのないセリフ回しということであれば、完璧な脚本と言えるのではいでしょうか。
・この映画は”コメディ”!
一見すると、この映画は”イギリス王室を描いた人間ドラマ”というように捉えられなくもないのですが、先述した通りの滑稽にも見える展開や低俗なくせに秀逸なせりふ回しという要素から見ると、この映画は明らかに”コメディ映画”なのです。
声を上げて笑えるようなものではなく、絶え間ない苦笑の連続とでもいうのか、続けざまなブラックな笑いに、最後にはため息さえ誘うような苦笑を禁じ得ないでしょう。
この絢爛豪華な美しさの中で繰り広げられるブラックな笑いに、劇場にいる観客全員が同時に共感するという滅多にできない体験を、ぜひ映画館で味わっていただきたいと思います。
・作品情報
タ イ ト ル:「女王陛下のお気に入り」(原題:「THE FAVOURITE」)
監 督:ヨルゴス・ランティモス
脚 本:デボラ・デイビス
トニー・マクナマラ
製 作:セシ・デンプシー
エド・ギニー
リー・マジディ
撮 影:ロビー・ライアン
編 集:ヨルゴス・モヴロプサリディス
美 術:フィオナ・クロムビー
衣 装:サンディ・パウエル
音 楽:ジョニー・バーン
出 演:アン女王:オリヴィア・コールマン
レディ・サラ:レイチェル・ワイズ
ハーリー:ニコラス・ホルト
マシャム:ジョー・アルウィン
ゴドルフィン:ジェームズ・スミス
モールバラ卿:マーク・ゲイティス
メイ:ジェニー・レインスフォード
・受賞歴
第91回アカデミー賞 :主演女優賞
第76回ゴールデン・グローブ賞:女優賞(ミュージカル・コメディ部門)
第75回ベネチア国際映画祭 :銀獅子賞(審査員大賞)
女優賞
英国アカデミー賞 :英国作品賞
主演女優賞
衣装デザイン賞
メイキャップ&ヘアスタイリング賞
ロンドン映画批評家協会賞 :英国作品賞
主演女優賞
全米映画批評家協会賞 :主演女優賞
etc
映画『女王陛下のお気に入り』 (オリジナル・サウンドトラック)
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